剥がれないためのカチオン電着塗装の施工上の注意点まとめ
目次
カチオン電着塗装で剥がれが起こる原因と対策
カチオン電着塗装は、優れた防錆性と密着性を持つ塗装方法ですが、施工条件を誤ると塗膜の剥がれが発生する可能性があります。塗膜剥がれは、製品の品質低下やクレームの原因となるため、施工時の管理が重要です。本章では、カチオン電着塗装で剥がれが発生する主な原因と、その対策について解説します。
前処理の重要性
カチオン電着塗装の密着性を確保するためには、前処理が非常に重要です。前処理が不十分だと、塗膜の付着力が弱まり、剥がれが発生しやすくなります。特に以下の点に注意が必要です。
① 洗浄不足による汚れの残存
塗装対象の金属表面に油分や異物が残っていると、塗膜と基材の間に障害が生じ、剥がれの原因になります。脱脂工程では、アルカリ洗浄や超音波洗浄を活用し、完全に油分を除去することが重要です。
② 化成処理の不具合
化成処理(リン酸亜鉛処理など)は、塗装の密着性を向上させる役割を果たします。しかし、化成皮膜が均一でないと、部分的に塗膜が剥がれやすくなります。化成処理の際は、処理液の濃度や温度、処理時間を適切に管理し、安定した皮膜を形成することが求められます。
塗膜厚みの管理
カチオン電着塗装では、塗膜の厚みが均一でないと剥がれの原因になります。特に、以下の点に注意する必要があります。
① 塗膜が薄すぎる場合
塗膜が薄いと、基材の凹凸に十分に塗装が行き渡らず、密着力が低下します。また、耐食性も低下し、経年劣化による剥がれが発生しやすくなります。膜厚測定器を使用し、適正な厚み(一般的には15~30μm)を確保することが重要です。弊社電着塗料はエッヂフロー性のある塗料を使用している為他社よりもエッヂ膜厚を稼ぐ事ができ、防錆性にも優れております。
② 塗膜が厚すぎる場合
逆に、塗膜が厚すぎると乾燥時に内部応力が発生し、剥がれの原因になります。特に、エッジ部分や凹凸の多い形状では、塗膜の厚みが均一にならないことがあるため、施工条件の調整が必要です。近年は自動車の足回りは厚カチと言われる厚膜電着塗装が増えており、防錆能力の強化を行うメーカーが多いです。
乾燥・焼付工程での注意点
塗装後の乾燥・焼付工程は、塗膜の硬化と密着性に大きく影響します。この工程でのトラブルが剥がれの原因となるため、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
① 焼付温度の管理
カチオン電着塗装の焼付温度は一般的に170~200℃ですが、温度が低すぎると塗膜が十分に硬化せず、密着不良を引き起こします。逆に、高温すぎると塗膜が過焼けして脆くなり、剥がれやすくなることがあります。焼付温度は、対象物の材質や形状に応じて適切に管理する必要があります。
② 温度ムラの防止
焼付炉内の温度分布が不均一だと、一部の製品で焼付不足が発生する可能性があります。特に、大型製品や複雑な形状の製品では、炉内の温度測定を行い、全体が均一に焼付されるよう調整することが重要です。この温度ムラを防止する為に、弊社電着塗装ラインは製品の大きさや重量でラインが分かれております。
素材ごとの剥がれやすいポイント
カチオン電着塗装は、さまざまな素材に適用できますが、素材ごとに剥がれやすいポイントが異なります。それぞれの特性を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
① アルミ素材
アルミは表面に酸化皮膜が形成されやすく、塗膜の密着性が低下する傾向があります。アルミ用の化成処理剤を使用し、適切な表面処理を行うことで、剥がれを防ぐことができます。弊社はアルミと鉄の併用ラインも持っており、アルミ処理に於いても、酸化被膜を剥がすフッ酸処理を行っております。
② ステンレス素材
ステンレスは化学的に安定しており、塗料の密着が難しい素材です。ブラスト処理やプライマー処理を施すことで、密着性を向上させることが可能です。
③ 亜鉛メッキ鋼板
亜鉛メッキ鋼板は、メッキ層の特性によって塗膜の密着が変化します。リン酸亜鉛処理を適切に行い、塗膜の密着性を高めることが重要です。
カチオン電着塗装の剥がれを防ぐためには、前処理の徹底、塗膜厚みの管理、乾燥・焼付条件の最適化が不可欠です。また、素材ごとの特性を理解し、適切な施工方法を選択することが求められます。これらのポイントを適切に管理することで、高品質な塗膜を維持し、製品の耐久性を向上させることができます。
カチオン電着塗装の品質を安定させるためのチェックポイント
カチオン電着塗装の品質を安定させるためには、施工条件の管理が不可欠です。塗装工程にはさまざまな要因が関与し、それらのバランスが崩れると塗膜不良や剥がれが発生する可能性があります。ここでは、カチオン電着塗装の品質を維持するために押さえるべきチェックポイントを解説します。
電着塗料の管理
電着塗装の品質は、塗料の状態に大きく左右されます。塗料の組成や物性を適切に管理しなければ、塗膜不良や密着不良が発生しやすくなります。特に以下の3点に注意が必要です。
① 塗料の濃度管理
電着塗料の濃度が適正でないと、塗膜の厚みにばらつきが生じる可能性があります。濃度が低すぎると塗装が薄くなり、逆に高すぎると過剰な塗膜形成が起こるため、常に規定範囲内に維持することが重要です。定期的に塗料の濃度測定を行い、必要に応じて調整を行う必要があります。弊社は社内でのノンブラー管理やASH管理を日常的に出来る設備を持っております。その他のMEQ等の管理に於いても、毎月メーカーにて測定しております。
② pHの適正管理
電着塗料のpHは、塗料の安定性や電着効率に影響を与えます。pHが低すぎると塗膜が硬化しにくくなり、高すぎると塗膜の密着性が低下することがあります。通常、pHは5.5~6.5の範囲で管理されることが多いため、定期的に測定し調整することが求められます。
③ 導電率の管理
電着塗装では、塗料中の導電率が適正でないと、塗装ムラや密着不良が発生します。導電率が低い場合は塗装の付着量が不足し、高すぎると過電着が起こることがあります。塗料中のイオン濃度や不純物の影響を考慮しながら、適切な導電率を維持することが重要です。
電着条件の最適化
電着塗装は、電圧や処理時間の設定によって仕上がりが大きく変わります。適切な条件を設定し、安定した塗膜を得るためには、以下の点に注意が必要です。
① 電圧管理
電圧が低すぎると塗膜が薄くなり、高すぎると塗膜が厚くなりすぎるため、塗装対象に応じた適正な電圧を設定することが重要です。通常、カチオン電着塗装の電圧は100~300V程度に設定されることが多く、製品の材質や形状に応じた調整が必要です。
② 塗装時間の調整
電着塗装の時間が短すぎると塗膜が十分に形成されず、長すぎると過剰な塗膜が付着しやすくなります。適正な時間設定を行い、塗膜厚みが均一になるよう調整することが重要です。
③ 攪拌のバランス
塗料槽内の攪拌が不十分だと、塗料の成分が均一に分散せず、塗膜の品質にばらつきが生じます。攪拌の強さや頻度を適切に調整し、塗料が常に均一な状態に保たれるように管理することが求められます。
異物混入や塗装ムラの防止策
異物の混入や塗装ムラは、塗膜剥がれの原因となるため、防止策を徹底することが重要です。
① 異物の付着を防ぐ対策
電着塗装では、ゴミや異物が塗膜内に混入すると、密着不良が発生しやすくなります。これを防ぐために、以下の対策を行うことが有効です。
- 塗装前のエアブローや水洗を徹底し、付着物を除去する
- 塗料槽のフィルターを定期的に清掃し、不純物を除去する
- 塗装工程内の環境を清潔に保ち、粉塵やゴミの発生を抑える
② ムラを防ぐための電着条件調整
電着塗装のムラは、塗料の流動性や電着条件によって発生します。電圧、時間、攪拌を適正に調整し、均一な塗膜形成を目指すことが重要です。特に、大型製品や複雑な形状の製品では、塗装ムラが発生しやすいため、試作段階での検証を徹底することが求められます。
剥がれを防ぐための検査方法
塗装後の検査を適切に実施することで、剥がれのリスクを未然に防ぐことができます。代表的な検査方法として、以下の試験が挙げられます。
① 密着性試験(クロスカット試験)
塗膜の密着性を確認するために、カッターで格子状に切り込みを入れ、テープを貼って剥がす試験です。塗膜が剥がれやすい箇所を特定するのに役立ちます。
② 塩水噴霧試験
塗膜の耐食性を評価する試験で、一定の塩水環境にさらし、剥がれや腐食の進行を確認します。特に、自動車部品や屋外製品では重要な検査項目です。
③ 付着強度試験
専用の機器を用いて塗膜の剥離強度を測定する試験です。塗膜の密着性を定量的に評価し、不具合の予兆を早期に発見できます。
①、②は弊社が持つ装置で出来ます。カチオン電着塗装の品質を安定させるためには、塗料の管理、電着条件の最適化、異物混入の防止、そして適切な検査が欠かせません。これらのチェックポイントを徹底することで、剥がれのない高品質な塗膜を実現できます。安定した品質を維持するために、日々の管理と改善を怠らないことが重要です。
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